池川佳宏の記録帳

マンガ業界のはじっこで、あまり他の人がやっていない仕事をしていた池川佳宏の記録です。

9/20(火) ~16:00に終了のコミックパークで読めなくなる作品リスト

絶版マンガをオンデマンド出版(紙の本)で復刊していた「コミックパーク」が9/20(火) ~12:0016:00まで(16時までに再訂正)でサービス終了することになり、10000冊のうち約700作品の作品が電子化されず再度絶版になることになりました。

コミックパーク

https://www.comicpark.net/

 

未電子化 (つまり今後読む手段がなくなるもの) について、10000冊を調査したうち700作品が該当しましたので、下記リストをぜひご参照ください。

コミックパーク未電子化.xlsx - Google スプレッドシート

 

★リスト上部に、もともと紙の本では出ていない未収録や初単行本化などを挙げ、途中から作者のあいうえお順になっています(順不同なので注意してください)。

 

また、「コミックパーク」元担当者として、コミックパークがどういうビジネスだったかを語るtwitterスペースをしたいと思います。

2022/9/11(日) 20:00~

トーク内容を下記にアーカイブしました。聞き手:菊池健さま

https://twitter.com/saikifumiyoshi/status/1568917253126787075

トーク内容のレジュメ

20220911コミックパークについて.docx - Google ドキュメント

 

電子書籍はサービスが終了すると読めなくなりますが、オンデマンドの「紙の本」は手元に残ります。こうした面も利点のはずですので、これはと思う作品はお買い求めください。

「投機目的の購入」もぜひ推奨します。買われないと著者にまったく印税入りませんが、投機目的でも買われれば1回は印税入りますので。初単行本化でも1000冊も発行されてないんで、爆上がり必至です。杉浦茂選集とか。このへんも電子書籍とは違うところです。

 

 

コミックマーケット100 (2022年8月13日(土・1日目)) に頒布されるふたつの同人誌に寄稿しました

2022年8月13日(土)・14(日)開催のコミックマーケット100  で頒布されるふたつの評論同人誌に寄稿しましたので、ぜひお求めください。

■ひとつめ 13日土 東ヘ26b フラクタル次元『内山亜紀評論同人誌 亜紀ねいた〜』

昨年発売され、研究ページも盛りだくさんな『あんどろトリオ 完全復刻版』に補足的な内容の同人誌です。僕は「手塚治虫が見たロリコン美少女文化・おたく前史 - 内山亜紀への嫉妬、その真実に迫る」という論考を10ページ寄稿しています。噂として流れている、「手塚治虫内山亜紀への嫉妬として『プライム・ローズ』を描いた」という都市伝説は果たして本当なのか、内山先生へのインタビューと多方面の当時の資料を調べつつ、81~83年の「プレおたく史」について手塚治虫の目から見た状況をふりかえるという内容になっています。手塚研究はたくさんありますが、この時期の手塚にフォーカスをあてた貴重な研究になっていると思います。

なお、この寄稿と並行している、手塚治虫公式サイト「虫ん坊」での黒沢哲哉さんの連載も、同じ方向を違うアプローチで追及しています。こちらの記事も併読していただくと、より立体的に当時の状況や「プライム・ローズ」について知ることができるようになっていますので、この連載もぜひ。

手塚マンガあの日あの時+(プラス) シリーズ企画 手塚マンガとブーム:美少女マンガ・アニメブームの時代(1977-1985) 第1回:『プライム・ローズ』VS『あんどろトリオ』|虫ん坊|手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL

 

■ふたつめ 13日土 東ヘ25a 夜話.zip『〈エロマンガの読み方〉がわかる本5』

こちらは小特集「日本短編エロ漫画傑作集」への寄稿で、個人的な思い入れのあるエロマンガを3点ピックアップしました。個人的なおすすめと今年書籍発売された『エロマンガベスト100+』に補足する情報となっております。僕がネット上で話題となった「レ研」にいた話(?)とかはあまり他で語っていないので、興味ある方はどうぞ。

今回でC100となるコミケですが、初参加は大学に入って先輩のマンガ批評サークル「Mechanism of Vision」の手伝いでサークル参加した1995年夏のC48からですので、もう全体の半数以上かかわっているということになります。このサークル内で初編集したのが1998年夏C54の『この女(エロマンガ)でヌけ!』という54ページオフセットの評論本で、当時かなり画期的なエロマンガガイドブックでした。この本をプレゼンに使って出版社の面接を受け、1999年には出版社に入社して編集者になります。そういうターニングポイントの本でした。「Mechanism of Vision」のサークル参加活動は2005年までで終了します。

個人的事情で本年中に東京から引っ越すため、コミケの参加はおそらくC100が最後になるかな、と思います。最後の参加で、エロマンガにかかわる同人誌に寄稿することができて光栄に思います。

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」に、マンガ原画特集と矢口高雄特集で出演しました

2020年、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」のコーナー「ビヨンド・ザ・カルチャー」に11月11日・12月8日と2度出演しました。すでに過去2回出演しているので、合計4回出演したことになります。

11月11日は「マンガ原画のアーカイブ最前線」をテーマに、秋田県にある横手市増田まんが美術館の大石館長とZOOMで中継し、マンガ原画の現状と数量、横手市増田まんが美術館の取り組みと館の設立に大きくかかわりのある矢口高雄先生についてお話しました。

特集:マンガ原画のアーカイブ最前線

https://www.tbsradio.jp/archives/?id=p-536290

(上記ページで、特集の音声が登録なしでも聞けます)

しかし、その後すぐの11月20日、大変残念なことに矢口高雄先生が逝去され、数日後に公になりました。TBSから急遽連絡があり、12月8日に矢口高雄追悼特集を組むため解説者として再登板してもらえないかとの依頼がありました。僕は矢口高雄の専門家ではないものの、研究者としてそれなりの知見はありましたので受けることにしました。何より、ご遺族の方から「11月11日の放送を、病床の矢口先生が亡くなる1週間前に聞かれていた」と聞き、このご縁を大事にしようとの思いが強くありました。

特集:マンガ家・矢口高雄は、今でも最高のマンガ家である!

https://www.tbsradio.jp/archives/?id=p-544366

(上記ページで、特集の音声が登録なしでも聞けます)

12月8日の追悼特集では、矢口高雄のマンガ史での位置づけと評価、そして矢口先生特有のエピソードをお話しました。天才的な画力を持ち、銀行員からマンガ家になられた矢口先生は語るトピックが多数あり、硬軟とりまぜて楽しくお話することができたと思います。次女のかおるさんにもZOOMでご出演いただき、ご家族ならではのお話もたくさん聞くことができて、素晴らしい回となりました。

驚愕する矢口先生のエピソードに、「原稿はすべて締め切りの一週間前に納品していた」というものがあります。銀行員出身ならではの(?)誠実な仕事ぶり、かつあの画力という人柄と才能は、すべてのマンガ家さんの尊敬するところでしょう。その矢口先生が「亡くなる一週間前に、11月11日放送の録音を病床で聞かれた」と聞き、なんてキッチリした矢口先生らしいエピソードだろう、と感涙しました。矢口先生、聞いてくださってありがとうございました。

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」の裏話をちょっと。この番組は事前にTBSのディレクターと放送作家の古川さんとの事前打ち合わせがあり、話すネタと構成について詰めておきます。準備はそこまでで、あとは1発本番で1時間ある「ビヨンド・ザ・カルチャー」のコーナーでずっとしゃべりっぱなしになります。番組全体の進行台本はありますが、コーナーはほぼ「あとはおまかせ」で、構成上CM入りとCM明けに話すことの指示がちょっとあるくらいです。

僕の出演回はいつも、MCのライムスター宇多丸さんや宇垣アナとの事前打ち合わせは一切なく、やりとりはすべてぶっつけ本番です。僕は事前に用意した大量のネタを剛速球で次々に投げていくのですが、すべての球を宇多丸さんは華麗にキャッチしてくれるので、生放送でも心配なくどんな球を投げることができます。ラップで鍛えられた宇多丸さんの現場対応力がこの番組を成立させているわけですね(即興ジャズで鍛えられたタモリさんにも通ずるところがありますね)。

それにしても、「アフター6ジャンクション」は3時間番組で濃いゲストが毎日3人出て、それを月~金の帯番組生放送をやるなんて、宇多丸さんと放送作家の古川さんはものすごい胆力です。素晴らしい番組に出させていただいてありがとうございました。

★池川出演のそれ以前の放送回はこちらです

(音声は下記のページの再生ボタンでは聞けませんが、radiko(ラジコ)をインストールして同番組アーカイブを探していただくと無料で聞けます)

・特集:巻と号。マンガ雑誌の“号数”に注目するとアーカイブの大切さと雑誌についての理解がギンギンに深まっていく特集

https://www.tbsradio.jp/archives/?id=p-286864

(雑誌巻号の沼について、マニアックにかつ楽しく語った回です。副読本として『マンガ研究』24号「雑誌書誌の巻号や日付の関する報告」もどうぞ)

・特集:過去のデータで、未来が見える。地道な調査で、驚きが生まれる。 マンガとアーカイブ特集

https://www.tbsradio.jp/archives/?id=p-383765

(マンガ単行本や雑誌などのアーカイブの現状とそこからわかる調査結果について楽しく語った回です)

日本芸術文化振興会の報告書「我が国のマンガ・アニメーション分野における自主制作活動等に関する実態調査」が公開されました

2019年度に報告書を提出した「我が国のマンガ・アニメーション分野における自主制作活動等に関する実態調査」(NPO法人知的資源イニシアティブ委員として)が2020年秋に公開されました。

これは、主に「マンガ・アニメのプロ活動以外の実態について、数量などを調査してみた」というものです。なにかしらの数的論拠になるものと思いますので、論文などに活用していただければ。

 

「我が国のマンガ・アニメーション分野における自主制作活動等に関する実態調査」

https://www.ntj.jac.go.jp/assets/files/kikin/artscouncil/jisyuseisaku.pdf

・「カートゥーン」の制作活動に関する実態

・「同人誌」の制作活動に関する実態

・「インディペンデントアニメーション」の制作活動に関する実態

のうち池川担当として「カートゥーン」「同人誌」分野の調査・ヒアリングなどを行い、報告書にまとめました。

 

■「カートゥーン」については、

・2018年9月、全国新聞・地方新聞を含めてすべての新聞をめくり、「その月一番1コママンガを描いているか」を統計調査した(岡部拓哉さんの調査による)

・「日本にどのくらい1コママンガ家がいるか」の調査をした (日本漫画家協会の協力による)

・下記の1コママンガ家、関係者へヒアリング(インタビュー)を行った

ウノ・カマキリカートゥーン作家、公益社団法人日本漫画家協会理事)
篠原ユキオカートゥーン作家、京都精華大学教授、FECO JAPAN 会長)
茨木正治東京情報大学教授)
野谷真治(1コママンガ誌『EYEMASK』編集人、蒼天社代表)
はまのゆか(カートゥーン作家、絵本作家)
チョン・インキョンカートゥーン作家、東京工芸大准教授)

 

■「同人誌」については、

・2018年1年間、地方のイベントも含めて、「1年間にどのくらいマンガの同人誌即売会が開催されたか」を数量調査した(玉川博章さんなどの調査による)

同人誌即売会主催者へのアンケートなどによって、2018年時点の「サークル数」「同人誌出版点数・頒布冊数」「頒布金額(同人誌の市場規模)」について推計した(玉川博章さん、全国同人誌即売会連絡会などの調査による)

・下記の同人誌即売会主催者へヒアリング(インタビュー)を行った

コミックマーケット準備会(共同代表:市川孝一、広報担当:里見直紀)
コミティア実行委員会(代表:中村公彦、実行委員:吉田雄平)
ガタケット事務局(代表:坂田文彦)
株式会社ユウメディア(副社長:山崎暁)

 

というものです。特に赤字部分、各ヒアリングについては、おそらくこれまで調査・文書化されたことがほとんどなく、今回初めて明らかになったことが多くあります。

どこぞの○○総研とかのお手盛り調査でない、リアルに近い数字が出ていると思いますので、ぜひ参照していただければと思います。

2020年の登壇活動2件

2020年の登壇活動をふたつ記録します。

■2020年3月 企画展示「ポスターに見る漫画と地方自治体」(主催:公益社団法人日本漫画家協会  調査 キュレーション: 池川佳宏、小田切博 協力:幸森軍也、椎名ゆかり、原正人)

の連動シンポジウム「漫画家と社会の相互作用 日本漫画家協会の活動から」で、池川登壇部分で「日本漫画家協会賞」がさまざまな漫画賞がある中で果たしてきた役割についてお話しました。

漫画賞の歴史と位置づけ(図版作成:池川)

シンポジウムは2020年3月24日(火)14:00~で、YouTubeで中継配信されました。

 

■2020年8月15日 資料性博覧会13 内イベント「マンガはいくつあるのか? 果てしなき探求」に登壇しました。メディア芸術データベース(開発版)の構築の話から、国会図書館での調査のコツ・裏技などについてお話しました。

drive.google.com

11年執筆した『マンガ論争』年末企画の「○○年のマンガ 復刊マンガ編」の連載を終了しました

即売会で発売されるミニコミ『マンガ論争』の年末発売号に2010年から掲載していた「○○年のマンガ 復刊マンガ編」を連載終了しました。通常号『マンガ論争』22号(2019年12月発行)、次の『マンガ論争増刊 2020年のマンガ』(2021年4月発行)で最終回とさせていただきました。

いずれもすで完売していますが、Kindle版は購入できます。

manronweb.com

最終回とした理由について、執筆記事から下記転載します。

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■「復刊」の言葉が消える?
 2010年の年末号(4号)から毎年掲載しているこの「復刊」レビューを今回で最終回とさせていただくことにした。この11年の総括を本稿としたい。
 本レビュー開始の背景には、2009年の手塚治虫新宝島』(原作 酒井七馬 小学館クリエイティブ)、『藤子・F・不二雄大全集』(全115巻 小学館)のころから大御所の大型復刊企画が登場したことが大きい。当時は並行して復刊ドットコムコミックパークマンガショップなど細かなタイトルの復刊を行うレーベルもあり、数年は復刊の飽和状態が続いていた。
 しかし2010年代後半には大ネタのタイトルは出尽くし、かわりに電子書籍による過去作品のアーカイブ化が進んだ。この中で刊行を終了するレーベルもあり、大型復刊に力を入れていた小学館クリエイティブも規模を縮小していく。
 老舗の復刊ドットコムはリクエスト投票からの復刊システムを辞め、確実に売れる手塚治虫の「雑誌初出版」を軸に他作品も売るモデルに移行。同様に手塚作品を手掛かりとして、少女系に強い立東舎やイラスト集に強い玄光社が新規参入している。
 分厚いA5判で1万セット以上を販売した前述の藤子F全集の影響か、講談社は同様のスタイルで水木しげるつげ義春の全集をリリースした。先日予告された大友克洋全集には新機軸を期待したい。
 過去作が幅広く電子書籍化される中、「マンガ図書館Z」のような広告モデル配信や、国会図書館や美術館によるデジタル公開(閲覧)サービスも進化した。一方で権利的に難しい、内容表現的に難しいとされていた作品も関係者の尽力で大半が復刊に至り、元原稿・元本がなく「物理的に」難しいとされる復刊も、スキャナや画像処理の技術が進んで解決するケースも多い。総評して現状は「読めない作品はほぼない」状況になっている。
 その中で、今後「読めない本を読めるようにする」という「復刊」の言葉の持つ意味はより薄らいでゆき、今後は出版業界全体としてクラウドファンディングを含めた「高価格帯本によるイベント化」と、商業・非商業含めた「電子媒体によるアーカイブ化」の二極化していくと思われる。現在に至る流れをこの連載で記録できたことが筆者にとって大きな喜びである。

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『マンガ論争』への執筆には、僕が中学生時代に読んでいた『COMIC BOX』掲載の分野別レビューの存在が大きく、こういう仕事をしたいと思っていたのでした。気軽に書けた媒体でしたが、執筆にとても準備が要る原稿にもかかわらず次第に復刊情報をトピック化しにくくなったこともあって終了とさせていただきました。とてもよい経験をさせていただき、ありがとうございました。また別の記事でご協力できればと思います。

内山亜紀『あんどろトリオ 完全復刻版』の調査・取材・撮影協力をしました

稀見理都さんによる、伝説のロリコンマンガ「あんどろトリオ」(内山亜紀)の復刊ブロジェクトに全面協力しまして、掲載から40周年となる2021年11月にめでたく発売となりました。

本復刊プロジェクトは掲載誌の調査から内山亜紀先生へのヒアリング、京都国際マンガミュージアム所蔵のマンガ原画の調査、内山亜紀先生のドローイング撮影、愛☆まどんな先生との対談企画などさまざまな内容で、研究的・多角的に問題作「あんどろトリオ」の全貌に迫ろうというものでした。

その研究成果をふんだんに盛り込み(研究記事・インタビューなどが50ページ以上)、腰巻ならぬ「オムツ」(パンツ?)を身にまとうという前代未聞のギミックで太田出版から発売されました。読むたびにオムツを脱がさないといけないという画期的な本に仕上がっております。

www.ohtabooks.com

プロモーションとして動画も公開されました。いつBANされるか不安です。

www.youtube.com

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動画撮影の多くを池川が担当しています。僕がこれまで撮影したマンガ家のドローイングは、メビウス吾妻ひでお田中圭一、そして内山亜紀(敬称略)となり、僕にとってはどれも同じくらいの巨匠ぞろいです。

単行本はギミックに凝りすぎて再販できず実質的な初版限定ですが、電子書籍版もありますのでコッソリと読みたい方はオマケもある電子書籍版もどうぞ。