双葉社『追悼、モンキー・パンチ。ある漫画家の、60年間の軌跡』に調査・執筆で協力しました
12月24日に発売された、双葉社『追悼、モンキー・パンチ。ある漫画家の、60年間の軌跡』で、企画ページ「モンキー・パンチの貸本漫画の世界」と「モンキー・パンチ《不完全》作品リスト」を担当しました。
7月に双葉社より追悼企画の話があり、企画段階からコンセプトや協力者お願いを含めて参加しておりました。2019年4月に亡くなられたモンキー・パンチ先生は、「ルパン三世」に関する解説・紹介本は多数ありますが、モンキー先生自身についてのまとまった資料はほとんどありません。双葉社では『漫画アクション』50周年に伴い、『ルーザーズ』(吉本浩二)の連載など歴史掘り起こしの機運があり、それにのったという側面もあります。
宣伝です。絶賛発売中の双葉社『追悼、モンキー・パンチ ある漫画家の60年の軌跡』の「貸本漫画の世界」ページの文・構成を担当しております。貸本漫画研究家の成瀬正祐氏による1959年の貸本デビュー作とその解説、そして成瀬氏とまんだらけ、現代マンガ図書館協力の「貸本リスト」最新版を公開! pic.twitter.com/rjCrnDkwwU
— 池川佳宏 (@saikifumiyoshi) 2019年12月27日
そして追悼本のもうひとつの担当、「モンキー・パンチ《不完全》作品リスト」です。ファンサイト運営のTyper井上氏との共同調査で、200以上のマンガ作品を初出調査の上でリスト化しています。プロダクションの公式記録が無く、残念ながら《不完全》ですが、これだけの大量調査リストは史上初です! pic.twitter.com/gvjnSURX0U
— 池川佳宏 (@saikifumiyoshi) 2019年12月27日
モンキー・パンチ追悼本はB5サイズの大判で、今まで未収録の扉絵などが満載です! pic.twitter.com/gO0DnOKdYt
— 池川佳宏 (@saikifumiyoshi) 2019年12月27日
「貸本漫画の世界」では、『まんだらけZENBU』94号で公表されている貸本リストから、貸本漫画研究家の成瀬正祐氏と現代マンガ図書館に情報を追加していただき、現在判明している情報を集約しました。貸本作品のうち、成瀬正祐氏からデビュー作『死を予告する鍵』の解説原稿と図版をいただき、昭和漫画館青虫から『C調刑事さん』の図版撮影協力をいただきました。なお、僕は企画冒頭の文章で、マンガ史における貸本の位置と、「空白期間」として語られていないその間のモンキー・パンチの作家活動について解説しています。いわゆる「貸本劇画」のムーブメントとも違う、「ルーザーズ」で描かれる以前の若きモンキー先生の状況について、ある程度わかりやすく理解できると思います。
「モンキー・パンチ《不完全》作品リスト」については、双葉社が先行して出していた狩撫麻礼追悼本の「《不完全》作品リスト」と同じく、暫定の調査リストです。プロダクション公式の作品リストは一切なく、ファンサイトを運営されていたTyper井上さんが唯一調査データを公開していました。Typer井上さんに全面協力をお願いし、僕は過去の「メディア芸術データベース(開発版)」で調査した『週刊漫画アクション』目次データと、各種スペシャリストの方(鈴木淳也さん、V林田さん、想田四さん、タッド星谷さん、森田敏也さん)に情報協力をいただいて、各種図書館に通い、考えうる最大限の調査を行いました。もっとも、依然として不明な作品も多く、イラストや他メディアの活動などは追い切れていません。さらなる継続調査のための基礎情報と考えていただければ幸いです。ついでに、テキトーに書かれていたwikipediaの明確な発表年の誤りは訂正しておきました。
そのほか、インタビューや未収録の扉絵再録など、僕の担当以外も貴重で魅力的な企画ページが満載です。是非お求めください。
モンキー先生は、実は60年のキャリアの中で、貸本・同人誌・雑誌週刊連載・アニメ監督・メディアミックス・デジタルコミックなど、さまざまな表現媒体にかかわってきた数少ないマンガ家です。こうした観点からも研究が進むことを望みます。
★【重要】
池川が監修していない、モンキー先生のプロフィールページの記述が間違っています。モンキー先生が上京されたのは20歳(1958年)、デビューされたのは1959年です。いずれも1957年と記載されていますが、これは誤りです。(貸本ページでの説明をご参照ください)
またこの仕事が、公開終了した「メディア芸術データベース(開発版)」を参照元とした最後の成果発表となりました(現在公開されている「ベータ版」では各種データ項目が削除されているため調査が不可能です)。また、亡くなられた「昭和漫画館青虫」の高野館長にも最後にご協力いただきました。ありがとうございました。